最近話題のLinuxコンテナを試してみました。
Linuxコンテナ
従来の仮想マシンと比較して軽量な仮想環境としてコンテナが注目されています。仮想マシンのようにまるごと物理マシンをエミュレーションした環境を用意するのでなく、ネットワークやプロセスIDなどのみが独立した環境(コンテナ)を用意してその中でプロセスを実行するタイプのOSレベル仮想環境です。今回はそのコンテナについてもっともベースとなる部分を試してみました。LXCのインストール
最近はコンテナの利用する環境を整えるのにも各ディストリビューションに対応したパッケージをインストールするだけで大丈夫です。 コンテナを利用するための実装にはいくつのかの種類がありますが今回はLXCを利用します。他にはDockerなどが有名です。ただLinuxコンテナの核となる部分はカーネル側の機能なので、実装が違っていてもベースとなる考え方は一緒です。今回はDebian/Jessieを利用しますが、LXCはほとんどのディストリビューションでパッケージ化されていると思います。またカーネルが必要な機能を有効にしてコンパイルされていないとダメなのですが、ディストリビューションの標準カーネルであればまず問題ないはずです。
DebianのJessieではapt-getでインストールするだけです。
# apt-get install lxc
コンテナの作成
ではコンテナを作りましょう。一連の作業はrootで実行する必要があります。コンテナの作成においては、コンテナ用のファイルシステムを作成することがメインです。あとはコンテナを実行するためのLXCの設定ファイルも必要です。
コンテナ用のファイルシステム
コンテナ内のプロセスからはこのファイルシステムがルートファイルシステム(/)として見え、基本的にここにしかアクセスできません。コンテナ内のプロセスはこのルートファイルシステム上で実行されます。コンテナを作成するには先ほどインストールしたLXCのユーティリティに含まれるlxc-createコマンドを利用するのが簡単です。
lxc-create -n <コンテナ名> -t <テンプレート名> -- <テンプレートオプション>
例:test1という名前で64bit Debian/Jessieのルートファイルシステムを作成する場合
# lxc-create -n test1 -t debian -- --arch amd64 --release=jessie
lxc-create コマンドは-tオプションで指定したテンプレートに従ってルートファイルシステムを作成します。テンプレートは/usr/share/lxc/templates/lxc-<テンプレート名>という名前で実体が用意されています。必ずしもホストのLinuxと同じディストリビューションのファイルシステムでなくてはいけないということはありませんがアーキテクチャは同じでないといけません。ホストが64bitであるならばルートファイルシステムも64bit用のものを用意します。
debianテンプレートの場合debootstrapコマンドを利用してネットワーク越しにrootfsを取得してきます
# lxc-create -n test1 -t debian -- --arch amd64 --release=jessie
LXCの標準的な構成であればコンテナの保存場所は/var/lib/lxcになります。その場所の<コンテナ名>ディレクトリ以下にコンテナの一連のファイルが作成されます。
# cd /var/lib/lxc
# tree -L 1 test1
test1
|-- config
`-- rootfs
# ls test1/rootfs/
bin dev home lib64 mnt proc run selinux sys usr
boot etc lib media opt root sbin srv tmp var
作成されたコンテナの一覧はlxc-lsコマンドで確認できます。
# lxc-ls -f
NAME STATE IPV4 IPV6 AUTOSTART
-------------------------------------
test1 STOPPED - - NO
まだ、コンテナを作成しただけで実行してはいないのでSTOPPEDになっています。
コンテナの実行
早速コンテナを実行してみましょう。コンテナを実行するとはコンテナ内でなんからのプロセスを実行することです。実行するものはなんでも良いのですが、コンテナ内ではコンテナのルートファイルシステムにしかアクセスできませんので、その上にプロセス本体のファイルが存在していることが必要です。本体の実行にライブラリが必要なのであればそれも同様にルートファイルシステム上に存在している必要ががあります。デフォルトで作成される設定ファイルは内容がまだスカスカで実用には十分ではありませんがとりあえずコンテナ内でプロセスを実行することはできるはずです。
ここではコンテナ内でシェル(bash)を実行してみます。コンテナ内でのプログラムの実行するにはlxc-startコマンドを利用します。
# lxc-start -n test1 -- /bin/bash
bash: cannot set terminal process group (-1): Inappropriate ioctl for device
bash: no job control in this shell
警告が出てしまいますが、シェルをコンテナ内で実行できました。このシェル上で色々確認してみるとこのシェルのプロセスがコンテナ内に閉じ込められていることがわかります。
ファイルシステムは/var/lib/lxc/test1/rootfs以下の部分にしかアクセスすることができません。そこがコンテナ内ではルートファイルシステム(/)として見えていることが分かります。
root@test1:/# pwd
/
root@test1:/# ls
bin dev home lib64 mnt proc run selinux sys usr
boot etc lib media opt root sbin srv tmp var
root@test1:/# cat /etc/hostname
test1
psでプロセスを確認してみると自身のシェル(とpsコマンド)しか見えないのがわかります。他に大量に動作しているであろうホスト上のプロセスは確認できません。しかもシェルのPIDがなんと1番になっているのがわかります。
root@test1:/# ps -ef
UID PID PPID C STIME TTY TIME CMD
root 1 0 0 05:12 ? 00:00:00 /bin/bash
root 11 1 0 05:40 ? 00:00:00 ps -ef
ipコマンドでネットワークを確認してみるとネットワーク(eth0)がないことがわかります。ディストリビューションによってはLXCインストール時にコンテナ用のネットワークが用意され有効になっているかもしれません。いずれにしてもホスト上のものとは別のネットワークが見えるはずです。
root@test1:/# ip addr
1: lo: <LOOPBACK> mtu 65536 qdisc noop state DOWN group default
link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
シェルから抜けて終了させてみます。するとコンテナも終了します。lxc-lsコマンドで確認してみてもstoppedになっていると思います。コンテナでは基本的にコンテナ内でPID1番に見えるプロセスが終了するとコンテナ自身も終了します。
再びコンテナ内でbashを実行して、ホスト上の別端末からlxc-lsコマンドで確認してみます。今度はステータスがRUNNINGになっていると思います。
# lxc-start -n test1 /bin/bash
bash: cannot set terminal process group (-1): Inappropriate ioctl for device
bash: no job control in this shell
root@test1:/#
別端末から
# lxc-ls -f
NAME STATE IPV4 IPV6 AUTOSTART
-------------------------------------
test1 RUNNING - - NO
コンテナの外からコンテナ内で実行しているプロセスがどのようにみえているか確認してみます。bashだとどれがコンテナ内のbashなのか確認しにくいのでコンテナ内のbashから適当なプロセスをさらに実行して目印にしておきます。
root@test1:/# tail -f /dev/null
ホスト上でpsコマンド実行するとコンテナ内のプロセスは普通に確認できることがわかります。プロセスIDも他のプロセスと同様のものがちゃんと振られています。コンテナ実行時のlxc-startが親プロセスとしてコンテナ内のbashを実行し、それがコンテナ内ではPID1番(外側では12146番)として扱われています。
# ps -ef
UID PID PPID C STIME TTY TIME CMD
...
root 12142 12081 0 05:47 pts/1 00:00:00 lxc-start -n test1 /bin/bash
root 12146 12142 0 05:47 pts/1 00:00:00 /bin/bash
root 12156 12146 0 05:49 pts/1 00:00:00 tail -f /dev/null
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